『歳をとっても変わらない人』
あるところに一人のおじいさんが、駅の改札を出たすぐにある階段に座り込んでいました。
とても複雑そうな表情をして、頬杖をついていました。
そのとき、私の心はこう思いました。
「この人の悩みは、昔から続いているんだろうな」
そのとき、私の脳裏に一人の青年が映りました。
青年は、目の前のおじさんと同じような態勢で、頬杖をついていました。
青年の心はこうでした。
「どうしたらこのモヤモヤとした気持ちはなくなるのだろう。食べても、遊んでも、いつもついてまわる。
でも、この心もいつかは解けるだろう。歳をとれば、解決される日がくるだろう。きっとそうだ」
青年は立ち上がり、そのままどこかへ消えていきました。
そしておじいさんの姿だけが見えました。
おじいさんの心はこうでした。
「結局この歳になっても、解けるものはなかった。いつかは解決されると思ったけれど、
そうじゃなかった。今自分は、どうしたらよいのだろう」
時間がすべてを解決してくれるのではない。
考えが変わらない限り、歳はとっても、変わらない。
男性が頬杖をついて、座りこんでいる絵を描きたくなりました。
実は、私が実際に見た人でした。ですが、この人の心を、私は知りません。
ただ、見ながら、ふとこの物語が浮かんできたのでした。不思議ですね。
私たちの前には、問題がいつもつきまといます。それを解決して、また解決する毎日です。
学校なら単位や勉強、行事や、発表など、いろいろなことがありますよね。
仕事に行けばもっとそうです。仕事で生じる問題、問題、問題。それを解いて解いて解く毎日です。
ふとした瞬間、
もっとも深くて大きい問題。ああ、実はこれを解決できていない。
いつの間にか、歳をとってしまい、
考える暇もありません。
そういう時、ありますか?
もしかしたら、そのような問題が最後になって思い出されて、
駅の改札を出たすぐの階段で、
こんな風に座り込んでいたのではないのかなと、
空想した麦わらでした。